『絵画の書』
それは、かの万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した思考の結晶。
彼が生きたのは500年前。
けれども彼の言葉からは多くのことを学ぶことができます。
一見、彼の言葉は難解に思えますが、できるだけわかりやすく読解していきたいと思います。
今回これから紹介する言葉は、絵描きを志す若者に対するメッセージです。
例えば、
「絵描きになりたい。」
「絵が上手くなりたい。」
「絵の深淵に触れたい。」
そんな想いを持つ人に役立つのではないかと思いますので紹介してみます。
それでは、いってみましょう。
ダヴィンチ曰く、
若者がまず最初に学ぶべきことについて
若者は、まず最初に遠近法を学ばなければならない。次に、あらゆる物体の尺度を、次に、立派な四肢に慣れ親しむために、立派な師匠の手になる作品を模写し、次に、そこから学んだことの正しさを確認するために、自然物から模写し、次に一定の期間、他の様々な師匠の手になる作品を眺めること。次に、実際の制作に慣れて、この芸術に邁進すること。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 絵画の書 第二部 画家の教則について より
解説
以上の言葉を読んでみて、今の私が解釈してみます。
- 遠近法・物質の形・色彩などの理解を深める
- 師匠(好きな作家)の作品・名画を模写する
- 人物・風景・静物などの自然物を実際に見て描く
- いろんな優れた作品をたくさん見る
- とにかく自分の絵を描きまくる
①遠近法を学ぼう!
遠近法を簡単にいえば“実際に目に見える空間を画面上で表現する方法“というもの。
遠くのものは小さく、色も薄くて見えて、近くのものは大きくはっきりと見えます。
英語で書くと”perspective”
いわゆる”パース”と呼ばれるもの。
パースが崩れている絵を見たとき、人は違和感を覚えます。
実際に目に見える3次元の世界を2次元の画面に写すときに違和感なく表現することができれば絵の完成度が上がります。
レオナルド・ダ・ヴィンチはこの遠近法の重要さを理解し、自身も空気遠近法とスフマート技法と呼ばれるぼかしの技法を巧みに使って絵を描いていたようです。
セザンヌやピカソたちのように敢えて崩して描く方法も今では確立されていますが、破綻なく表現するための基礎としても、遠近法は知って置いて損はないかと思います。
②名画を模写しよう!
たった一枚の模写から多くのことが学べます。
模写は見本という正解を目標に行程を辿るのですが
模写を登山に例えてみます。
登るのは一見大変そうに思えますが、道をひたすら歩けば頂上にたどり着きます。
その道程では花が咲いていたり、小動物と出会ったり、天候のハプニングもあるかもしれませんがいろんな気づきと発見があるはずです。
模写も同じように完成への過程に気づきと発見があります。
構図、絵具の色、どうやって描いているのか、何に描いているのかといったことを必然的に考えさせられるはずです。
全てわからなくても良いと思いますが、何か一つでも得るものを見つけましょう。
モチベーションが上がらない場合は、部屋に飾りたいような好きな絵を模写するのがオススメです。
③自分の目で見て描こう!
今までのが基礎編だとすると次は実践編です。
基礎を踏まえた上で、風景、人物、静物など実際に目で見て描いてみましょう。
④たくさん作品を見よう!
優れた作品には多くのヒントが隠されている。
同じ画題やモチーフでも色使いや筆さばきで絵の雰囲気はかなり変わってきます。
それぞれの美意識やセンスなどにピンとくるものはどんどん吸収していきましょう。
ピカソの有名な名言があります。
優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む。
徒弟制度の職人が弟子に対して「見て盗め」と言うのは、「技術を自分のものにしろ」と言うことなのです。
デジタル化が進んでいる現代ですが、できるだけ本物の作品を生で見ることをおすすめします。
キャンバスに盛られた絵の具の立体感や筆跡がありありと感じられ、写真では伝わらないリアルな感動があります。
私も美術館や展示会にはできるだけ足を運ぶようにしています。
良いと思う絵を見つけたら、なぜ良いと思うのかを分析し、仮説を立てて検証してみましょう。
⑤独自の世界を描き上げよう!
基礎と実践と応用の次は「型破り」の段階。
あとはもう自分独自の世界観を作っていくこと。
画題、モチーフ、描き方、道具、色使い、形、マチエールなど、
自分が描きたいと思う感覚で突き詰めていって欲しいと思います。
人の数だけ表現方法があります。
リアルを追求する人。
ユーモアを交える人。
パッションをぶつける人。
いろんな絵があって良いと思うんですよね。
自分を信じて、突き進めてください。
あとがき
ダヴィンチの言葉を自分なりに解釈してみました。
よく言われている模写が大事と言うのは確かなようですね。
ただ、個人的には例え評価されずとも自分自身の表現を突き詰めていきたいと思います。
あなたもその高潔な魂をキャンバスにぶつけていってくださいね。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。