【絵画の書③】受胎告知から読み解く|絵画を構成するシンプルな3つの要素

目次

レオナルド・ダ・ヴィンチ『絵画の書

このシリーズ『絵画の書』では、レオナルド・ダ・ヴィンチの遺した言葉や作品から学び、絵描きとしての考え方や表現のヒントを読み解いていきます。
今回は「絵画を構成する3つの要素」について、一緒に考えてみましょう。

絵画という科学は、さまざまな表面が持つすべての色と、それらの表面が覆っている物体の形姿を扱い、さらにそれらの物体の遠近感を扱う。〜以下略〜

レオナルド・ダ・ヴィンチ 絵画の書 第一部 詩と絵画について より参照

この一文、シンプルですが絵画の本質を突いているように感じます。

▶︎油絵の描き方について解説した記事はこちら

3つの探究要素

ダ・ヴィンチにとって、絵画とは

色・形・遠近感

この3要素を探究する学問だったようです。

色と形と遠近感。

リズムに乗せるなら…

色と遠近感と形♪(部屋とYシャツと私のリズムで)

……失礼しました(笑)

では実際に、彼の作品から見ていきましょう。

受胎告知

計算されたパースと構図

この作品でまず目を引くのが、精密な遠近法(パース)です。

画面右側の建築物のラインを延長していくと、
消失点は中央奥の山へと収束していきます。

自然と視線が奥へ、奥へと誘導される構造。

さらにその山は空気遠近法で描かれており、
遠景ほど青みを帯び、霞んで見えます。

これは大気の厚みを表現する技法で、
画面に奥行きと静謐さを与えています。

構図の心理的演出

対峙する天使と聖母マリア。

その間にそびえる雄大な山——
この配置がテーマの荘厳さを静かに強調しています。

  • 左側:整然と並ぶ木々、水平の塀 → 安定・静けさ
  • 右側:人物の動き、衣の流れ → 感情・揺らぎ

まるで

  • 天使=決定事項を伝える静かな存在
  • マリア=それを受け止め驚く人間的存在

画面の左右で心理状態が対比されています。

配置は厳密に計算されつつ、
物語のリズムを生み出しているのが見事です。

補色を意識した色彩

次に注目したいのが衣装の色彩設計。

天使

  • 朱色の衣
  • その上に緑の衣

朱 × 緑 は補色関係。
互いを強く引き立てます。

聖母マリア

  • 青い衣
  • 下に黄色の衣

青 × 黄 も補色関係。

つまりこの作品、

主要人物2人とも補色設計

意図的に色が選ばれていることがわかります。

静かな宗教画の中にも、
視覚的な強さが宿る理由はここにあります。

いや〜、計算すごいですね。

正確な形態と明暗が描写されている

そしてダ・ヴィンチ最大の強みとも言えるのが形態描写。

  • 手のプロポーション
  • 指の動き
  • 衣のヒダ
  • 重力のかかり方

すべてが自然。

さらに光と影(キアロスクーロ)によって
立体感が違和感なく成立しています。

特に手。

骨格・筋肉・皮膚の厚みまで感じさせる造形は、
彼の解剖学研究の成果とも言えるでしょう。

卓越した観察力と描写力の結晶です。

あとがき

『絵画の書』の言葉と実作品を照らし合わせると、

  • 遠近感

この3要素が確かに画面内で統合され、
理論と実践が一致していることが見えてきます。

文章で学び、絵で答え合わせをする感覚。

ダ・ヴィンチの思考に少し触れられた気がして、
とても面白い体験でした。

まだまだ理解は入口ですが、
これからも学び続けていきたいと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次