油絵の具とはどんな絵具なのか?その特徴と性質を調べてまとめてみた

絵の具の王様、油絵の具について調べてまとめました。

油絵は幅広い表現ができますが使い方が難しくもあります。

油絵の具という画材の理解を深めることで今後の制作がスムースになりますので、これから油絵を始めてみようと思っている人や既に油絵を描いている人にとって今後の制作のヒントになってもらえれば幸いです。

それでは行ってみましょう。

目次

油絵の具の歴史

 

油絵の具の歴史は古く、西欧で開発され発展してきました。

もともとは漆喰に描くフレスコ画から発展し壁に描くものから板、キャンバスへと持ち運べるよう風土や気候によって基底材が変わってきました。

その時代時代に活躍している画家の作品を見ると、当時の技法の変遷を読み取ることができます。

西欧では14世紀頃から使われ始めていましたが日本に油絵の具が伝来されたのは江戸末期から明治初期頃だと言われています。

油絵の具の組成

油絵の具はポピーオイルやリンシードオイルなどの乾性油顔料からできています。

乾性油とは乾く性質を持った油です。油絵で主に使われる油はリンシードオイル・ポピーオイル・サフラワーオイル・ラベンダーオイルなどの植物性乾性油です。

油絵の具=乾性油+顔料

油絵の具の特徴

水彩絵具は水が蒸発して絵の具が乾きますが、油絵の具は酸素と油が結合する“酸化重合”という油と酸素の化学反応で絵の具を画面に定着させます。

この酸化重合はゆっくりと進むので、加筆修正が数日間可能です。また、もっと早く乾かしたい(便宜上”乾く”と表現します)という場合は温度が高いほど化学反応は早く進むため室温を上げるか、酸化を早める油やメディウムを利用すれば短時間で乾かすことができます。厚塗りした場合、完全に乾くには半年〜1年ほどかかると言われています。

水彩絵の具やアクリル絵の具は水を含んでいて乾燥すると絵の具自体が痩せるということが起こりますが、油絵の具は痩せはありませんし画面のツヤや色の変化も少ない非常に優れた絵の具なのです。透明感を生かして深い色調を表現することができます。

油絵具の特徴その①

画面のヤセがなく、色変化が少ない

水彩絵具やアクリル絵具は絵具自体に水分を含んでおり、乾燥に伴い画面のヤセ、色やツヤに変化が起こります。油絵具はそういうことがありません。

油の乾燥とはどういうことなのか?

油は酸素を取り込んで乾燥する『酸化重合』という形態をとります。

この酸化重合の反応には熱が発生するので乾性油を含んだ紙などを廃棄する際は、ビニールなどに入れ口をしっかり縛って酸素の供給を止め、水を加えて処理しましょう。

油絵具の特徴その②

ズバリ、深い色調と透明感です。

他の絵具にはない透明感、つまり深みが得られます。

これには、油の「屈折率」が関係しています。

顔料がむき出しで直接、光を反射させる水彩に対して、

油彩画は油の層を屈折しながら通過するので画面に深みが出るんです。

油彩画はこの重ねがけをうまく利用していきます。

油絵具の特徴その③

丈夫な画面

耐久性の高い優れた画面を作りることができますが、注意点があります。それがファット オーバー リーン(Fat over lean)と呼ばれるものです。

この言葉が何を意味するかというと絵の具に混ぜていく画用液の量のことを指しています。日本語にすれば下層貧油・上層富油。描きはじめは油を少なく、描き進めるにつれて油の量を増やしていきます。こうすることで定着を良くし、ひび割れなどが起こりにくい画面ができます。

描き始めはテレピンやペトロールなどの揮発性油を使い、徐々にポピーオイルやリンシードオイルを多くしていきます。

油絵に使うことができる油

油絵は油を使うからと言ってごま油やサラダ油を使うことができるわけではありません。

なぜなら、乾かないから

ずっとベタベタでは絵が完成したことにはならないからです。

乾く性質の油で液体のもの、つまり植物性乾性油が描画に使われます。

  • 紅花油(サフラワーオイル)
  • ひまわり油(サンフラワーオイル)
  • 亜麻仁油(リンシードオイル)
  • ケシ油(ポピーオイル)

他には大豆油・くるみ油なども。中でも代表的に使われているのはリンシードオイルポピーオイルです。

乾性油の種類と特徴

ポピーオイル リンシードオイル
乾燥 遅い 速い
塗膜 弱い 強い
黄変 しにくい しやすい

ポピーはリンシードに比べて乾燥も遅いし塗膜も弱めですが、黄変がしにくいという利点があります。ホワイトと混ぜたりするときに使うと良いです。

リンシードはポピーに比べて黄変しやすいのですが、乾燥も早く塗膜も強いので下地作りや色が干渉しない強い色を溶く時に使うと良いです。ちなみに黄変は日光にさらすと色が戻ります。

油絵具を早く乾燥させる方法

  1. 室温をあげる:酸化重合は温度が高いほど早く進む
  2. シッカチフを加える:適度な量(5%以下)でないと厚塗りでシワが寄る弊害もあり。
  3. アルキド樹脂系メディウムを使う:ラピッドメディウムなど

夏場は温度が高いので制作に向いています。冬場はシッカチフやメディウムを併用して乾燥速度を上げてみましょう。

制作を急ぐ学生は、作品を電気カーペットの上に乗せたり、カイロを当てるなどのワザも使うみたいです。

油絵の技法

油絵の具はこれまでにたくさんの画家たちによって様々な使い方をされてきました。幾つかの技法を紹介します。

  • スフマート技法
  • グリザイユ技法
  • カマイユ技法
  • ドリッピング技法
  • グレーズ技法
  • インパスト技法など

使用する道具

  • 油絵の具
  • 溶き油
  • パレット
  • ペインティングナイフ
  • 筆洗油
  • ウェス
  • キャンバス

まとめ

油絵の具の特徴

  • 油絵の具には深い色調と透明感がある
  • 画面ヤセがない
  • 丈夫な画面になる
  • 早く乾燥させるには室温を上げる

油絵の具の使い方

  • ファットオーバーリーンを意識する

今回は油絵の具についてざっと概要をまとめてみました。油絵の具は使うほどにその特性が理解できます。うまく生かせるようになると、絵の具の伸び、透明感の美しさ、表現の幅広さなどを感じられると思います。絵画表現の幅という点で油絵の具は非常に奥深い画材だと、個人的に感じております。

油絵を描くときの合言葉は・・・

ファット!オーバーリーン!

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