画材屋さんの油絵具コーナーに行くと、ガラスの瓶に入った画溶液がたくさん並んでいます。
油絵を始めた頃は種類がたくさんありすぎて、何のオイルをいつどうやって使えばいいのかわからない。そんな疑問を抱いてました。
ぶっちゃけ、ペインティングオイル一本あれば描けてしまうのですが、
湧き上がる画溶液の疑問について調べてみたのでまとめてみたいと思います。
油絵の具についてはこちらの記事を参考にしてください。
オイルの種類
描画用の油は基本的に次の3つに分けられます。
- 揮発性油
- 乾性油
- ワニス
乾性油を変化させた加工乾性油や、乾くのを速める乾燥促進剤、またこれらを配合した調合溶き油などがありますが、基本的にはこの3つから成ります。
それぞれの特徴と、使用するタイミングについて、順に見ていきましょう。
揮発性油
書いて字のごとく、揮発する油です。揮発とは液体が気体に変化してしまうことですね。描画しても揮発してしまうので画面に油が残りません。
- テレピン (ターペンテイン):松ヤニから精製
- ペトロール:石油系精製油
などがあります。
主に油絵具の薄め液として使います。これらを混ぜることで絵の具の伸びがサラッサラに良くなり筆運びがサラッサラにスムースになります。描き始めのおつゆ描きという段階で使用します。溶かす力、溶解力が強いので、おつゆ描きの段階であれば描き直しや修正が簡単にできます。
ペトロールに比べテレピンの方が乾燥は早く溶解力も強いのですが、長期間空気にさらされていると変質しやすいという傾向があります。
ペトロールは石油系の独特の臭いがあります。
個人的にはテレピン派ですがホルベインさんの『スパイクラベンダーオイル』も好きです。
ラベンダーから得られる芳香性の強いオイルで良い香りがします。
こちらも揮発性油なのでおつゆ描きで使用します。
乾性油
乾性油とは絵の具の固着材として機能します。もともと、色の顔料自体には固着力はなく、画面に定着させるには「糊」が必要です。その糊の役目を果たすのが、この乾性油です。
つまり、キャンバスと絵の具を繋げてくれる仲人的な存在なのです。
中盤から終盤にかけて使用していきます
- リンシードオイル:アマの種子から搾油、精製
- ポピーオイル:ケシの種子から搾油、精製
リンシードオイル
固着力が強く強靭な塗膜を作ることができますが、黄変しやすいため下地以外のホワイトなど明るい色と混ぜるのはあまり良くない。
ポピーオイル
固着力はリンシードの方が強いのですが変色しずらいので扱いやすいオイルです。
乾性油には他にも、サフラワーオイル(紅花)、サンフラワーオイル(ひまわり)、ウォルナッツオイル(くるみ)などがあります。
加工乾性油
リンシードオイル、またはポピーオイルを日光と空気に晒して増粘させたもの。絵具に光沢と透明感を与え乾燥を早める効果も期待できます。
- スタンドオイル:加熱加工されたオイル
- サンシックンドオイル:日光に曝したオイル
ワニス
ワニス・バニス・バーニッシュと呼ばれるこれらは、仕上げ剤です。
ツヤ消し、ツヤ出し、保護剤などの効果があります。
ツヤ(光沢)は画面に深みと輝きを与えます。
逆にツヤ消しのマットな画面は落ち着いた印象になり、光の反射がないので鑑賞しやすいという利点があります。
描画用ワニス
- パンドル:ダンマル樹脂+ペトロール+ポピーオイル
- ダンマルワニス:ダンマル樹脂+テレピン
- ベネチアンテレピン:ヨーロッパカラマツの松ヤニ成分
などがあります。これらは描画中に使用できます。
画面保護用ワニス
タブローは完全に乾燥させた後に塗布します。油絵が完全に乾燥するには半年から1年ほどかかると言われています。
ブランマットリキッドはつや消しの保護液です。マットな仕上がりになり平面的な印象になります。
タブローはスプレータイプのものも販売しており、手軽に画面保護ができます。
調合溶き油
これまで紹介した油をメーカーの方でちょうどよく配合してくれている『調合溶き油』を紹介。
ペンチングオイルはリンシード系の調合溶き油です。黄色味がありますが固着力が強く安定性があります。
ルソルバンはポピーオイル系の調合溶き油です。透明度があり、定着性を補うよう調合されています。
オイルを使う順番
色々なオイルを紹介してきましたが、何のオイルをいつ使えば良いのかを簡単に解説していきます。正しい順番で描いていかないと後々描きづらくなってきますのである程度頭に入れておくようにしましょう。
描き始め
おつゆ描きと呼ばれる下書きの段階はテレピンやペトロールで描きましょう。
たっぷりのテレピンで溶いてシャバシャバの状態で描きます。
溶解力も強いので描き直しが容易にできます。
初期の描き込み〜中描き
描き進めていくにしたがって乾性油の量を少しずつ増やしていきます。
テレピンに調合油のペンチングオイルを3:7から最終的に2:8くらいの割合で描いていきます。
仕上げ
細部を描き込んでいく仕上げの段階ではペンチングオイルに加え描画用のワニスを2~3割ほど混ぜていきます。光沢とツヤが出てきます。
乾燥を速めたいとき
乾燥を速めたいときは『速乾メディウム』を絵の具に直接混ぜるか『クイックドライングメディウム』などで溶いて描くと速いです。
気温が高いほど酸化重合が進むため電気ヒーターなどの上に乗せたりする荒技もあるみたいですが、火気にはくれぐれもお気をつけください。
まとめ
油の種類もたくさんありますね。とりあえず慣れるまでは最初テレピンorペトロールで描いて、あとはペインティングオイルで描く。というシンプルなやり方で良いと思います。
油絵特有のツヤを出したい!ってなったらワニスやタブローを使っていきましょう。